退院して初めての診察。肺の影は復活していなかったので、ほっとする。 ただ、これから慎重に薬を減らしていくので、やっぱり少し時間がかかります。 アトリエDELFでモーパッサンをやるので、久しぶりに読み返してみました。 思えば、原語を読む苦しみを忘れて夢中になったのがこのLe conte du jour et de la nuitだったっけ。短編とはいえ決して易しくはないけれど、この人の、印象派の筆が描く風景の鮮やかさ、心地よい裏切りのある「chute(オチ)」、フランス語をやっていてこの世界を知らないのは本当にもったいないと思う。 ことば、というものを、わたしは信用していない。信用するのが怖い。 結局、記号に過ぎないものをどれだけ精製しても、ひとつの呼吸には勝てないと思っているから。 けれど、放たれた記号の塊たちが、整然と並びながら獰猛に飛び込んで来たものだから、考え直さなくちゃならなくなった。 意味を語り、同時に無意味で、切り取られた現実が夢のように現れる。恐るべき大胆さで、おずおずと存在する。 そうして、いくつかの青い羅列に切り裂かれたわたしは、あっと言ったまま、息を呑んで動けずにいるのです。