仏検の読解問題にどうしても必要な力(3)

 前回のおはなしは、仏検の問題文の構成は、パラグラフを見ると意外にシンプルっていう話でした(仏検の読解問題にどうしても必要な力(2))。今回は、一見難しそうな長文問題の何をもって「シンプル」というかをもう少し突っ込んで見ていきたいと思います。

 私が仏検問題文を見て「わっかりやすいな〜」と思う点というのは、ひとえに文やパラグラフの「状況補語 (Complément circonstanciel)」「接続表現(mot de liaison)」が、非常にわかりやすく配置されているというところにあります。これらをチェックしていけば、話の流れがより明確になるわけです。

状況補語というのは、時間・場所・手段・目的・理由・条件などを表している部分で、たいがい avec, pour, en, à などの前置詞を使ったグループや副詞で構成され、仏検レベルの文であれば、コンマで区切られて文頭か文末に見つかることが多いです。

 例:Hier soir, j'ai rencontré une amie à la gare. (昨晩駅で女友達にばったり会った。)

イタリック体 (和訳は太字)部分が状況補語です。読解や聴き取り試験では、このような状況補語の中でも特に「いつ・どこで」というのをチェックして行きます。特に「いつ」は、文中で時間の流れを把握するのに必要になるため、気をつける必要があります!

 接続表現は、文と文をつなげる「connecteur(コネクター)」と呼ばれるものです。Et , mais, donc などをはじめとしてかなりの量があります。これがわかっていれば、展開を読むのがとーっても楽になります。後で、パターンの例をいくつか挙げておきますね。

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 実は、高度な文書になってくると、こういった分かりやすいアンカーは滅多に登場しなくなり、叙述の力のみで読み手を惹きつける文章を作り上げる傾向が高くなります。ネットで時事を読む人が増えた結果、スピード感ばかりが重要視されて、じっくり読み応えのあるものが少なくなってきてはいますが、それでもやはりLe Mondeを始めとする大手新聞で、「簡単には読ませてくれない良文」を読むことができます。

最近出会ったもので秀逸だと思ったのは、映画「この世界の片隅に」のフランス公開時のル・モンド紙のレビューです。

« Dans un recoin de ce monde » : les rêveries d’une ménagère dans un Japon en guerre

読んでみるとわかるのですが、文頭周辺にほとんど接続表現が出てきません。しかし、読み手がこのアニメーション作品についてもっと知りたい、続きを読みたいと思わせるようにパラグラフを構成し、うまく流れを作って引き込むよう書かれています。また、どちらかと言うと言語化しにくいこの作品の魅力について、片淵監督の手法が他の映画とどのように違うのかを対比させながら述べていき、この作品を見てみたいなと思わせるように、丁寧に作られているんです。

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 さて、それでは、私がどんな風に問いていくかを実際にやってみます!今回は、仏検のサイトにある過去問サンプル(2008年秋) 2級の大問 4を使ってみましょう。

つづきはnoteの記事でお読みいただけます。(無料)

 

Source: 仏検読解問題の解き方(2)