太極拳は武術のひとつとされていますが、私のお師匠さまは「舞い、ダンスです」という。
陰陽のすべて、この世界にあるもの、海や山になびく雲や動物、空、海底、木、すべてを表現していると、私には感じられる。
でも武術であるから、型のひとつひとつは『敵』に向かったときの動作を考えて作られてもいる。
当然、こぶしを作ることが何度かある。こぶしは、でもすっとすぐに解かれてしまう。
初めは、先生がほとんどこぶしを作らないのを見て 「ああ、この人は本当に争いが嫌なのだな、どんな場面でも争うことを自分に許しはしないのだな」と思った。 それで、私も作らないでいた。
つい最近、稽古をしているとき、自分のこぶしがぱっと開くのを見て、 「こぶしがあることを忘れてはいけないのでは」と思った。
人はこぶしを作ることができるということ、そこから目を背けるのではなく、それを知った上で、こぶしはいらないと自分の意思を表現することなのかもしれない、と思った。
それで、少ししっかりこぶしを握ることにした。そして、そのこぶしを開く瞬間を前よりもっと大事にするようになった。 自分の幸せを願うのと同じくらいみんなの幸せのために舞うことができればいい。 ありがとうございます。