最後のスイーツ。
新潟日報・新潟南地区に投函される「TAKE A WALK」9月号で、e-corフランス語コミュニケーション教室が「まちのがんばり屋さん」コーナーに紹介されています。 中地区公民館のフランス語講座は、2008年のフランスセミナーがきっかけで発足してここまでのんびりペースでやって来ましたが、残念ながら事情により9月1日で最終回となりました。 夏休み前に写真を見て説明したり、お話を作ってみてください、という課題を渡していたのですが、みなさんの作品はそれぞれの個性が光っていて素晴らしかったです。 お餞別に皆さんにフランスの諺や有名な人たちの言葉をひとりずつ書いてお渡ししたのですが、それを眺めながら色々なことを考えました。 フランス語学習者の口によく上る発言があります。 「ちっとも上達しなくて」「不真面目な生徒なんです」「万年初級なんです」 日本語特有の謙遜表現で、気持ちもよくわかります。昔は私も言っていました。 だけど、ある時それを毎回一生懸命教えてくださる先生の前で言った時に、はっと気づきました。 この言葉は自分を擁護するためのズルイ言い回しなだけでなく、先生の努力や配慮を否定して(そんなつもりはないけれど)遠まわしに「この先生に習っても上達しない」と宣伝していることにもなっているんじゃないか、と。 同時に、このお題目を口にする度に自分に「あんたはダメだ」と暗示を掛けていることになっているかもしれない・・・。 それから、自分が今はダメだとわかっていても上記のような言い方は自分にも先生にも失礼だからやめよう、と決心して、そういう発言がアトリエの参加者さんからひょい、と出ると「私に失礼ですからやめてください(笑)」とずけずけ言うようになりました。 だって、教えてるほうからしたら、教室に通いだした時から比べて本当に成長しているのですから、それを否定するなんてもったいないんですもの。 それで、参加者さん方は入室される方がいると、自己紹介で「ちっとも成長せ・・・あ!いや、ちょっとずつなんですが、なんとか伸びてきています。」などと、言い換えて下さるようになりました。 日本語の謙遜表現は、欧米的感覚にそのまま入れるとなんだかややこしい人だと思われてしまったりするし、だからといって日本語で「初めまして、私はフランス語を始めて3年目ですが、もう昔に比べてものすごい伸びて、今では授業にも余裕でついていけるようになりました。」などと初対面で言われるとそれはそれで面食らうものです。使っている言語によって全然捉え方が変わってしまうのですから仕方ないのです。言葉は記号だけれど、それを発する時には話者同士の関係やその場所・時代・歴史・文化・・・という空気を纏っているわけですから。 謙遜表現を、自分を卑下しないように上手く使うには言葉のスマートな言い換えが必要。日本語暦=年齢でも、そうそう簡単には参りません。そういうことも、やっぱり母国語以外の言葉を勉強してみて始めて気づくことなのでしょうね。 2010年が始まった時、「今年実現してみようということ」に、「たのしく学ぶフランス語」の面々は、ひとりひとりが「らしい」目標を作ってきて下さり、とても印象に残るものでした。それが、皆さんの中でそれぞれどんな風に実現していくかなぁと、「フランスのベーカリーで働いてみたい」という参加者の一人が焼いてきてくれたマフィンを眺めながら、ひとしきり思い出の雲を浮かべていたのでした。 中地区の皆さんには最後にボリス・ヴィアンの言葉を送ります。 Une sortie, c'est une entrée que l'on prend dans l'autre sens. Boris Vian (出口ってのは、もう一方の道への入り口なんだ。) BGM:BABY, I'VE GOT TIME (THE BLUE VAN)