G E N I A L !
窪田 英水氏の本とは、相性がいい。
映画とか、教えるときのポイントとかの視点が近いのかもしれない。
もう10年以上前に出た旅行用の会話集なんかでも、巷に出ている見掛け倒しのフランス語の参考書よりよっぽど使えます。
そもそも、この先生の著書とジェムの辞書を頼りに、ろくに喋れもしないまま私は無謀にも旅立ったのです。
この辞典は確かに初心者向けではないのですが、探究心の強い人でフランス映画が好きな人にはとっても向いているんじゃないかな。AからZまで、映画の中で使われている「これぞ、フランス語」という表現を、シナリオの抜粋を使って網羅しています。文法解説は少々アカデミックですが、フランス語の文法書を使っている人にはちょうど良い簡潔さです。
こういうときに使う、という例としてのシナリオはとっても役に立つし、類似の表現も載せていてくれて、巻末にはインデックス付き。まさにジェニアルです。
ぱらぱらと捲っていてつくづく感じました・・・フランス語ってホント、不思議な言葉です。
これだけ「論理的(ロジック)」をしつこく追求するのに、この辞書に載っている表現って全部ニュアンスでしかありません。むしろ、言葉面を裏切っている、パラドックスの体現みたいなものばかり。日本語にすると結構なイヤミになるんですが、そのギャップの中にユーモアがじんわり現れるのが感じられるようになると、フランス語がとても面白くなるんでしょう。
色々好きなフレーズはあるんですが、これは実際聞いたことがないので、ナマで出会ってみたい。
Bonjour qui? Bonjour mon chien ?
(「こんにちは、誰っていうの?こんにちは僕のわんちゃん?)
ママが「こんにちは」の後にきちんと相手の名前を言わない子供の無作法を注意する時に言うそうです。
確かに、親密さは名前を呼ぶところにモロに現れるので、近所の人と会った時にただ「Bonjour」だけだと人付き合いが悪いとか、心を許していないと思われるかもしれません。顔見知りは大概「Ah, bonjour, monsieur X ! Ca va?」と名前付きですものね・・・。知らないうちに誰かを不快にさせているかもしれません。Bonjourひとつで!!