天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ
僧正遍昭
フランスに居た時に空を眺めることが多くなったと思っていたけれど、 ようく思い出してみれば、小さいときからの癖かもしれない。 雲を眺めながら歩いて、ボチャンとどぶにはまったこともあった。 中学生の頃、部活の帰りはもう夕暮れで、蝙蝠が飛ぶ。 (蝙蝠が飛んでいること自体、衝撃だった。新潟ではよくあることなのだろうか?) 飛んでいる蝙蝠に石を投げると、はっし、とつかむらしいという意味不明のうわさがあって、あほみたいに道端の石を投げまくったこともあった。 (よい子は、危ないのでまねしないでください。) 夕焼けの中にシルエットだけ浮かび上がる蝙蝠。 ちょっと物凄い風景だった。 今、道端に石を見つけるのさえ難しいんじゃないのかなー。 ヨーロッパの空というのは、日本よりも低いような気がする。アイルランドで見た雲は、すぐそばまでやってきて手でつかめそうな気がした。 なんで、こんなに空に惹かれるのか。 古の記憶。 こんな風に、いつかも空を見上げていたのかもしれない。 新栗の木川の夕暮れ。