怒涛の課題提出の山を越え。 水曜日に中世文学Robert le Diable「悪魔ロベール」のコモンテール・コンポゼ4ページを提出し、昨日、先日延期になった Le théâtre de la Foireのクラスのエクスポゼ Olivette juge des Enfers「オリヴェット、閻魔になる」(題意訳)についてを無事終了。なんか悪魔がかっていますが。 実は、このエクスポゼがわたしにとっては大きな大きな難関だった。
ナント大学文学部のカリキュラムでは、2年生から「Oral」という項目が必須で追加される。生徒は試験とは別に、学期中に必ず一科目をEcrit、すなわちDissertation(6ページほどの小論文)、残りをOral、口頭での抜粋分析・またはテーマを与えられて総括的な作品分析をしなければならない。 去年まで、私は尊敬するベルティエ先生でこのOralを受けていた。 ただし、クラス内ではなく、先生のBureau(個人オフィス)で。 クラスでみんなの前で発表するのは、それなりの肝っ玉がないとつらい。 さすがのわたしもクラス内でのOralは避けていた。 避けつつ、なーんか、やっぱり釈然としない。 卒業するまでに一度は乗り越えなくちゃいかんぞな・・・と、勝手にハードルをつくりながらも、あれこれ心配をしたり。 けれど、このLe théâtre de la Foire(18世紀、パリで開かれた市で行われた大衆劇・オペラコミック)で「やるしかない」と決めて準備を始め、あれよあれよという間に当日。自分でも不思議だったくらい、平気にできてしまった。 あれほど恐れていたのに! その原因のひとつとして、取り上げた作品が分析するのにとても面白かったからというのが大きいかもしれない。 わたしが選んだのはAlexis Pironという劇作家・詩人のもの。かなり濃い人でした。コメディ・フランセーズでも作品を書いていて、アカデミー・フランセーズに選ばれかかったのだけれど、Ode à Priape「プリアポスへの抒情詩」という作品があんまりにも卑猥だったので、ルイ15世が反対して入れなかったという強烈なエピソードがあるくらい。 ピロンは悔し紛れに、墓碑銘に 「Ci-gît Piron qui ne fut rien / Pas même académicien」 (ここに眠るはピロン、なにものでもなき者 / アカデミシァン(アカデミー会員)でさえもなし) なんてものを作ったりした。ちなみに、プリアポスはディオニュソスとアフロディテの息子で、偏執を体現する人物だそうな。 彼の作品はあふれんばかりの皮肉と下ネタで、エピグラムなんかも強烈。
Certain abbé se manuélisait Tous les matins, pensant à sa voisine. とある大修院長は、日課に 毎朝、隣に住む女を思っていた。
Son confesseur, l’interrogeant, disait ; Vertu de froc ! c’est donc beauté divine ? 聴罪司祭が彼に向かいこう尋ねる、 高潔なる僧侶よ!もちろん、聖なる美への、でしょう?
Ah ! dit l’abbé, plus gente chérubine Ne se vit onc ; c’est miracle d’amour ; ああ!神父は答える、もっとも愛らしき天使ケルビムは 現れやせぬ。
Tétons dieu sait ! et croupe de chanoine ! Toujours j’y pense, et même encore ici Je fais le cas. それよりこれぞ愛の奇跡であろう、 神のみぞ知るあのおっぱい!教会参事もびっくりのけつ! 常に思い浮かべてしまうのだ、そういう今も そうなのだから。
Pardieu, lui dit le moine, Je le crois bien, car je le fais aussi. なんてこと!司祭は答える、 お気持ちよくわかります、私もやってますから。
©まり訳(韻がうまく訳せてません・・・)
フランス人のあほなくだらなさ、やっぱり好きさ。。。 テアトル・ド・ラ・フォアールはこれまでほとんど研究されてこなかったので、ピロンの作品についてもあまり知られていません。この作品集は、今回クラスを取ったフランソワーズ・リュベラン先生の監修で出版されたばかりなんだそう。 ちなみに上のエピグラム、「いやー、私にはとてもみんなの前で音読する勇気はない」とおっしゃっていました。 このシモネタ満載のエクスポゼ、16点もくださいました。ありがたやー。Pironありがとう。(フランスの大学での評価は20点が満点です)