どこを探しても絶版で見つからなかった「Nouvelle histoire de la langue française」、アメリカから逆輸入。なんてこった。
この本は美しい。 初めて図書館で手にした時、そう思った。 はかないクリスタルのような時間を閉じ込めたような気がする。 内容はフランス語の進化についての専門書なのに、なんだか詩を読んでいるような感覚。
ヴァカンスはあっという間に去っていった・・・
9月にナントに戻ってきてから、課題に追われたりしていて、自分で何をしていたか一向に記憶がない。
返ってきた課題を見て、『私こんなこと書いたっけ???』
フランスの大学で勉強をしている日本人のわたしの前で 日本語を教えるためにInalcoに登録したフランス人O兄は心なしかピリピリ。 十分に思える彼の日本語力をもってしても、日本語はやっぱり難しいのだとか。
「裁判のさ、『裁』って何偏?辞書で探すときたいへんだったんだよ」
「知らない・・・」
考えてみれば、今わたしがフランス語を言語学的・修辞学的・文法的などなどから分析しているようなことを、母国語に関しては何も知らない。 なんだか鏡みたいだなぁ私ら、とKさんの作ったつくねをほお張る。 相変わらずKさんの作る料理はおいしい。 おいしいし、安心する。 奥さんの味で、母の味だからなのかな。
O兄の横では彼の長女が春雨のお変わりをし、わたしの横で暴君たる長男は「あんこ(encore)」とおわんを振り回す。
どこにでもある、普通の、鍋を囲む家庭の風景。
なんとなく日本で、なんとなくフランスな。
みんなですごろくをして、かるたをした。何年ぶりだろ、こんなお正月っぽいことをしたのは。
考えてみれば、もう4年も日本でお正月を過ごしていない。
「がんばろう、わたしたち」
湯気の向こうが、温かくかすんで見えた。